日EU経済連携協定(EPA)によって、影響がある企業は?投資の観点でEPAを徹底解説!
こんにちは、長期投資家のカボス( @olivetrhm)です。
今回は2月1日に発行された
日EU経済連携協定について、徹底解説し、日本にどのような影響があるか、
そして、投資の観点からどのような銘柄(企業)に影響があるのか、ご説明します。
EU経済連携協定(EPA)の目的
まずは本協定の目的について、下記の通り、関税局ホームページに記載されております。
本協定はアベノミクスの成⻑戦略の重要な柱(総理施政⽅針演説等)。 ⽇本の実質GDPを約1%(約5兆円)押し上げ、雇⽤は約0.5% (約29万⼈)増加の⾒込み。
(内閣官房TPP等政府対策本部による試算)
⾃由で公正なルールに基づく、21世紀の経済秩序のモデル(国有企業、知的財産、規制協⼒等)。
世界GDPの約3割、世界貿易の約4割を占める世界最⼤級の⾃由な先 進経済圏が誕⽣。
こんな感じで、堅苦しく意義、目的について、記載されているけど、要は世界のGDP3割に匹敵する大きな経済圏に対して、EPAという多国間共通のルールに基づき、貿易、投資などが行われることによって、日本の経済成長、雇用の増加が見込まれる。ということだね。
EU経済連携協定(EPA) 交渉開始から発行までの期間
上記画像の通り、2013年3月から交渉開始しているので、
今回の発行まで、なんと約6年間のもの期間を要しました。
ひぇ~、とんでもなく長い交渉期間があったんだね!?
うん、二国間協定ならまだしも、EUとの協定になると、言うまでもなく、多国間との協定になるから複雑に利害が絡みあう。議論をまとめるのは相当な胆力を要するよね、イギリスが今後どうなるか不明だけど、今回の協定は日本含めて、計29カ国との協定だから相当大変だったろうな....
EU経済連携協定(EPA)による、生活面での影響は!?
EPA発行により、私たち消費者に直接的に影響があるのは、やっぱり、ワインではないでしょうか?
・ボトルワイン :67円~125円/L もしくは15%
・スパークリングワイン:182円/L
上記の通り、今までEUから輸入するワインには関税が発生しておりました。
ワインのフルボトルは750mlなので、スパークリングワインの場合、
約136円程度、一本あたりに関税がかかっていたのです。
普段、万単位の高価なワインを購入されている方は関税撤廃による値下げ効果は、
軽微ではありますが、私のように1,000円くらいのワインを購入している方によっては、10%の値下げ効果があるので、素直に嬉しいです♪
日本からの輸出する際のメリットしては、下記画像にて、情報が集約されております。
自動車部品については、関税が即時撤廃、
乗用車(現行の税率10%)はについては、8年目に関税が撤廃されるなど、
日本で生産をしている企業にとっては、追い風です。
EU経済連携協定(EPA)を投資という観点で考えてみた
今回は業績の伸びを期待できる銘柄の紹介するのではなく、
日EU経済連携協定が悪影響になりえる可能性がある銘柄を紹介します。
それはこちらの企業です。
同社の特色としては下記の通り。
羽田空港の家主。空港内のテナント料、
羽田、成田の免税店運営が収益柱。
海外旅行に行くとき、タバコ、お酒、化粧品などを免税店で、
購入したことがある方は多いと思いますが、その店舗運営をしているのが、
同社です。
同社のセグメント別の売上を見てましょう。
こちらは昨年度末の業績です。
前年度の同社の売上は2,259億円、営業利益は134億円でした。
①国際線免税店の売上:354億円
②その他の売上:771億円
(その他売上は全額が免税店関連ではなく、国内線の店舗への卸売りも含まれる。)
②その他売上について、すべてが免税店の卸売りの売上ではないから、正確な数値は分からないけど、500億円~800億円は免税店関連の売上だと推察できる。そうすると、同社にとって、免税店事業は主力事業であることは明白。
言うまでもないかもしれませんが、免税店で購入する人の理由は、
関税、消費税等の税金がかからないため、安く購入できるからですよね。
空港の免税店って、海外からの有名な高級ブランド(シャネル、グッチ等々)が軒を連ね、それらブランドの生産国はアジアではなく、ヨーロッパが多いです。
EUとの経済連携協定により、関税0%への動きが進むことによって、同社の価格優位性が失われる可能性がある。例えば、繊維製の衣類なんかは、従来までは8.4~12.8%の関税が発生していたけど、それが即時撤廃されるため、その関税分の価格差が生まれなくなってしまう。
そっかぁ、関税が0%になったら、税金面での価格差は消費税の8%のみになるということだね。確かに免税店で買うメリットは少し損なわれるね。
皮革製品(皮製の財布等々)は即時撤廃ではなく、11年目以降に関税撤廃になるため、時間はかなり要しますが、高級ブランドを仕入れ、税金面での価格差を武器に販売する同社によって、向かい風であることは間違いないでしょう。
ただし、悲観一色になる必要はなし!
下記記事でも触れておりますが、
訪日外国人客は年間20%以上で増え続け、2018年は合計3,000万人を超える勢いです。
JTB総合研究所によると、下記の通り、述べております。
市場別の訪日外客数をみると、中国は61万7千人(前年同月比+8.8%)と成長を続けており、11月までの累計は2017年の年計を超えた。
一方、韓国58万8千人(同-5.5%)、台湾35万2千人(同-3.1%)、香港16万7千人(同-3.3%)と中国を除く東アジアは3か月連続で減少した。
夏から秋にかけての自然災害や政治的要因などにより旅行控えがなどが生じていると考えられる。その他東南アジアや欧米豪市場は、堅調な成長が続いている。
やっぱり、中国人がまだ伸びている。そして、グローバルでは所得が増えていることによって、東南アジアからの訪日客も堅調。政府目標は4,000万人だけど、遅かれ早かれ、達成すると思うな。
つまり、免税店の物販に関しては、価格差が生じにくく、なってしまうものの、
訪日客という母数の増加は見込めるため、空港内という最高の立地を生かして、
いかにお金を落としてもらうかが重要。
【HANEDA HOUSE】
そのため、同社は上記の通り、【モノ消費】⇒【コト消費】にシフトさせる動きがあります。空港内の待ち時間を生かした非常に良い取り組みですよね。
この事業について、あのホリエモンもメルマガ内で、このようなサービス提供を待ち望んでいたようなコメントをされておりました。
あの方は空港のヘビーユーザーですからね。
頻繁に利用される方は空港で時間をつぶすのに苦労されていたんでしょうね。
まとめますと以下の通り。
①EUとのEPAによって、段階的に関税【0%】の商材が増え、
免税店と通常のお店との価格差が縮まり、同社の価格競争力が減少。
②現行、同社によって、免税店事業は主力だが、長期的に伸び悩む可能性は高い
③訪日外国人は増加傾向のため、同社に追い風
④モノ消費ではなくコト消費に経営資源を配分してきているため、②のマイナスポイントをカバーできると予想。
【おまけ】EPAが発行されたからといって、関税0%にさせるのはすごく大変
実は私の本業は国際物流に携わっており、このEPAが発行されたということで、
実務について、調べたので、みなさんに少しだけ、ご紹介します。
まず、本協定によって、制度上、衣類などの関税が0%になったからといって、
何も手続きなしに関税が0%になるというわけではありません。
EUとの協定ですから、もし仮に、あなたがEUから衣類を輸入した場合、
あなたは輸入申告時に、税関に対して、この衣類は【EUで生産されたもの】ということを証明しなければいけません。
そのとき、他の協定(東南アジアなど)ではよく用いれられるのが、
下記の【原産地証明書】です。
この書類は文字通り、品物の原産地を証明するためのものです。
東南アジアなどの他の協定ではこの書類を税関に提出することによって、
品物の原産国が証明され、関税が0%になったりするのですが、
今回の日EU経済連携協定(EPA)はこの原産地証明書が使えないのです。
実はこれが非常に厄介なんです。
じゃあ、どうやって、税関に対して、原産地を証明するの??
原産地証明書の代替として、原産品申告書というものを採用しているんだ。輸出者、輸入者が下記画像のような資料を作成して、税関に提出するんだ。
輸出者、輸入者が自分たちで作成できるから一見、簡単そうに感じるのですが、
少なくとも下記情報を記載させる必要があります。
①素材はどこから仕入れたのか?
②どのような製造工程を経て、作られたのか
特に②については、かなり詳細な情報を求められるケースもあり、
商社などが資本関係のない外部から調達している場合、
製造工程まで把握していないため、
その資料集めだけでも、非常に骨が折れます。
そして、衣類の場合、同じ品番でも、色違い、サイズ違いでもそれぞれこの書類を用意する必要があるのです。
つまり、1品番に三色あった場合、一色ごとにこの申告書類を準備し、
税関からEUで生産されたことを認めてもらう必要があります。
アパレルの場合、色違い、サイズ違いを一点一点書類を準備することになったら、
季節が変わるたびに、何百、何千という書類を準備する必要があるため、
膨大な量の事務作業が発生すること間違いなしです。
このように、確かに制度としてはあるのですが、実際の運用面はあまりにも、
煩雑です。
しかも原産国を証明しなければならない相手は税関です。
誤解を恐れず言うと、税関の主なお仕事といったら、関税を徴収することです。
税関としては、各輸出者、輸入者が準備した資料に根拠不十分なところがないか、
探すところからスタートするのが普通なので、関税を無税するのはなかなかハードルが高いのが実態です。